女と男 一


あなたがこんな 怪我してたのを知って
わたしの心は 揺れ戻ってしまった
あなたとの愛が あまりに切なかったから
もう二度と会わない つもりでいたのに
あなたの痛々しい 姿を見たら
あなたを一人にして 行ってはしまえない

あの日二人で 映画を見ようと
約束の場所で 待っていたのに
いつまで待っても あなたは現れなかった
そのときわたしは これをきっかけに
あなたとはもう 別れようと決心したの
別れにはきっかけに なることがいるものね

数日たって あなたから電話があって
怪我してたのを知って びっくりしたわ
約束の日に来れなかった これがそのわけなのね
電話口に聞こえた あなたの声は
地獄の底から 助けを求めてるみたいに
切々として 哀れだったわ

もやもやした気持など ふっ飛んでしまって
わたしはあなたのところに 急いで駆けつけた
あなたは右足に ギプスをはめられ
松葉杖に寄りかかって ひ弱そうに見えたわ
あなたどうしてこんな 情けない姿になったの?
年甲斐もない浮気心に 天罰が当ったの?

あなたはもともと 華奢な体で
そうでなくても ひ弱そうに見えるのに
松葉杖に寄りかかっている あなたの姿は
ピカソが描いた盲目の オイディプスのよう
そのオイディプスの 手を引く少女のように
わたしもあなたの 支えになりたい

あなたはほんとに 華奢でひ弱な感じがする
ちょっとした力でも 壊れそうな気がする
そのとおりあなたはほんとに 壊れちゃったのね
でも壊れたおもちゃでも 私は捨てない
ましてあなたを 見捨てるわけにはゆかない
もう簡単にはあなたと 離れられないわ




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作者:愛の詩人とその恋人
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