四方山話に興じる男たち
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ドイツ及び地中海への旅行報告


四方山話の会今月(2017年7月)のテーマは、先日一部の会員が行った海外旅行の報告だ。その海外旅行というのは、七谷子を団長とするドイツ旅行と、石子が個人的に行った地中海クルーズ。この二つの旅行について、それぞれ代表者に報告してもらおうというわけである。

そんなわけで、今回は結構多くの参加者があるだろうと思って、いつもの会場に赴いて見ると、意に反して小子がひとりぽつねんと座っているだけだった。いつもならすでに数名のものがいて、おしゃべりをしているところなのだが、これは随分出だしが悪いねといいながら、とりあえず二人でビールを飲もうということになった。

そうこうしているうちに、他のものも順次顔を出した。結局今夜揃った顔ぶれは、岩、小、七谷、石、柳、浦及び小生の、あわせて七名だった。

まず、石子に地中海クルーズの報告をしてもらおうということになった。ところが石子はどういうわけか、誰とどのように楽しい旅をしたのか、詳細を語るのをいやがったので、概要でよいから語れと促したところ、次のような話をした。

トルコのイスタンブル経由でミラノに行き、そこからバスでヴェネチアに移動し、ヴェネチアから大型客船に乗ってクルーズを楽しんだ。コースは地中海東半分を、海岸沿いにクルーズするというもので、まずアドリア海を南下して、イタリア半島のかかとの部分を通ってイオニア海に出、ギリシャのペロポネソス半島を迂回してエーゲ海に出るというものだった。約二週間のクルーズだったが、あまり陸地に上ることはなく、船の中の生活を楽しんだそうだ。

しかしそんなに長い間船の中に閉じ込められていて息苦しくはないのかね、と言ったところ、そんなことはない、船はそれ自体が一つの街のようなものだし、アトラクションが数多くセットされていて、退屈するいとまがないのだそうだ。それに今回の石子の場合には、二人きりでいれば世界中どこでも天国になるはずの境遇にあるわけだから、屈託するはずもないのだろう。

続いて七谷子がドイツ旅行の報告をした。この旅行については、小生も別途報告の場を設けているので、是非それを参照して欲しいと思うが、それはそれとして、七谷子は七谷子なりの視点からこの旅行を振り返った。七谷子のことであるから、詳細な日程表を作成・配布のうえ、それに基づいて極めて微細な報告を行ったことはいうまでもない。

七谷子の報告を踏まえて、銘々が感想を述べる段になったが、なにせ参加者七人のうち五人は旅行の当事者とあって、議論が深まったとは言えないかもしれない。それでも旅行の楽しさは通じたようで、小子などは、(病身にかかわらず)俺もできたら一緒に行きたかったと言ったくらいだ。柳子のほうは、年中E(細君)と旅行していることもあり、いまさら老人たちと旅しても始まらない、と考えているのか、あまり強い反応は示さなかった。

この旅行が成功したことで、また新しい旅行の計画を立てたいね、という話になり、ロシアはどうかとか、満州はどうかとか、という話も出た。お互い老い先の長からぬ身としては、元気なうちに行っておいたほうがよろしいのは言うまでもない。

こんなわけで今回は旅行の話に夢中になって、いつものように世相を談じ合うということはなかった。ジャーナリストがいなかったせいもあるだろう。かりに談じたとしても、あまり生産的な議論にはならなかったと思う。なにしろ今の世相は貧相の限りであるから。

そこで次回以降の話になり、石子があらためて柳子にプレゼンテーションをするように迫ったが、柳子のほうでは、諸君とともに議論しあうに耐えるような映画がいまのところ見当たらない、したがって議論する材料がない、ということを理由に渋い顔をした。

そんなわけで小生が、ピンチヒッター並びにペースセッターとしての意味合いを含めて、プレゼンテーションをすることとなった。テーマは「民主主義と正義」にしたい。ついてはカール・シュミットの議論を手掛かりに論じたいと思うから、諸君にはシュミットの著作のうち「現代議会主義の精神史的状況」を読んでおいてもらいたい。岩波文庫から出ている。100ページにも満たないので、読むのに苦労しないはずだ。そう皆に通告した次第である。



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