赤レンガ倉庫（F4号 ウォーターフォード 2002年）
数年前何かの折に、いまだ造成中のみなとみらい地区を歩き、新港の埋立地をよぎった際、赤レンガの倉庫群のうら寂れた光景を眺め、これは絵になる風景だと思ったことがあった。周囲の殺伐とした雰囲気の中でも、暗褐色のレンガの肌合いと、どっしりと重量感のある建物の構造が、圧倒的な存在感をもって、人の目をひきつけたのである。
この倉庫は、かつては港湾都市横浜を象徴するものとして、市民が誇りにしていたというから、役目を終えて躯体を風雨にさらすのみになっても、いまだに、人に訴えかけるものを失わないでいたのかもしれない。
そんなことがあって、風景スケッチを嗜むようになってから、一度描きに来たことがあった。その時は修復工事の最中で構図を選ぶのに苦労した。やっとスケッチを終えて着彩する段になって水を忘れたことに気付いたり、風が強くて筆が運河の中に飛ばされたりと散々な目にあったことを覚えている。この絵はその翌年に再訪して描いたものである。やはり風の強い日であったが、苦労しながら何とか仕上げることができた。
