田町の和菓子屋(24×32cm ヴェランアルシュ 2002年12月)

利根川図誌という徳川時代の書物に佐倉を紹介した短い記述がある。江戸の方角から佐倉街道を下ってきて鹿島川を渡ると佐倉六町があり、田町はその入り口だという内容である。

わたくしの家族が東京から佐倉へ越してきたのは昭和30年代半ばの12月のことであった。まだ子どもだったわたくしはトラックの助手席に乗せられて、佐倉街道の沿道の風景を眺めながらこれから住む土地のことなどを思いやっていたが、トラックが川を渡って田町に入るや、道沿いに熟した柿の実が目に入ってきた。いまでもその光景を妙に生々しく覚えている。それ以来、枯れ枝からぶら下がった熟した柿の実は、わたくしにとっては佐倉の町の原風景のように心に焼きついたのであった。

その時に見たと同じ光景を今でも見ることができる。田町の街道沿いにある古い和菓子屋の庭に柿の古木が立っていて、毎年暮近くになれば枯れ枝から熟した柿の実がぶら下がるのである。木があの時のものと同じであるかはわからないが、和菓子屋の建物は同じままに立っている。






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