不忍池の蓮(23×30cm アルシュ 2002年8月)

不忍池に蓮の花が咲く頃は、東京が一年で最も暑い時期である。日中はそれこそ身を焦がすような熱気のために、とても池畔を散策する気にはなれないが、それでも夕方近くになって、吹き来る風がやや涼気をさそう折や、白雨がさっと通り過ぎたあとなど、大きな葉っぱの間から長く首をのばした茎の先に、薄紅色に折り重なった花弁を見るのは、何とも夏らしき風情の感ぜられる眺めである。

不忍池に蓮の花が咲き始めたのは、たいそう遠い時代のことであるらしい。元来この池を忍ばずといい、池を見下ろす岡を忍ぶの岡と、対称して呼びならわすのは、古代以来のことであった。忍という文字を、どちらが先につけられたかは詳らかにしない。いずれにせよ、山と池とは古来一対にものとしてとらえられていたのである。  

徳川の初期、寛永寺が造営せられた際、岡の方は比叡山に、池は琵琶湖にそれぞれ擬せられた。琵琶湖には竹生島がなければならぬというので、中の島が作られ、その上に弁財天が祀られた。今に伝わる弁天堂である。






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