常盤橋(24×32cm ヴェランアルシュ 2003年)
戦後外堀が埋め立てられて堀に架かっていた橋もあらかた消えてしまったが、常磐橋は残されて古い時代の威容を今に伝えている。作られたのは明治十年、石造としては府内最初の橋だった。材料は城門の石垣の一部を転用したそうだ。アーチをえがいた姿がなかなか絵になる。
徳川時代には江戸城から見て奥州道中の起点にあたる場所にあった。浅草口とか称されていたらしい。当時は無論木造の橋であった。今は隣に日本銀行の旧館がたっていて、橋の上からクラシックな壁を眺めることができる。橋の内側には昔の門の石垣が一部残っており、ポケットパークのようになっている。そのためか周辺にはホームレスが多い。
橋を美しく描くには下から眺めた構図がよいだろうと思い、アングルを探し回ったが、堀端には頑丈な柵がはられており水面近くに下りることができない。また橋の頭上には高速道路が重石のようにのしかかっていて、橋の景観を著しく損なっている。そこで大胆に取捨選択して表現したのがこの絵柄である。高速道路も周囲のビルもみな省き捨てた。