パリ紀行
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ベルシー・ヴィラージュ Bercy Village:パリ紀行その十九


余らがパリ旅行中に滞在せしホテルは Hotel Kyriad Bercy Village といひて、パリ十二区、セーヌ川沿いの一角にあり。かつてはパリの田舎などともいはれをりしが、今や域内に地下鉄十四号線貫通し、都心まで十分内外にして達する便宜あるところに変化せり。

ホテル最寄りの駅はクール・サン・テミリオン駅なり。一四号線の東の端に近き駅にて、西の終点サン・ラザールまでは五つ目十分程度、東の終点までは二つ目五分程度にて到着す。沿線の駅は他の線に接続し、何処に出かけるにも便利至極なり。



このあたりはひと昔前まではブドウ畑が広がりをりし由なり。パリの田舎とはかかるところから出でたる言葉といふ。二〇世紀の末、シラク市長時代に大規模なる再開発施され、一九九八年には地下鉄一四号線開通す。以来急激なる発展をとげ来れる由。いはば新興の街なり。

新興の町といひても東京の如く雑然たる印象は与えず、街路もそこに立つ建物も、しっとりとした趣を呈するは、パリの都市計画の生きたる証拠なるべし。

ここに見らるるとほり、パリの都市計画の見事さは、此度の旅行においても最も印象深きものなりき。一九世紀に完成したる街並を、二一世紀の今においてなほ尊重し、それを保存せんとする意思厳然と貫かれたり。都心にはモンパルナスタワーを唯一の例外として高層建物の建築を認めず、建物の改築に当たっては、既存建物の外観を残す、かかる立場は市民全体の強い支持なければ、とても貫かれえざるなり。

個人の悪趣味がまかりとほる東京の建築事情とは大いに異なりたると覚えたり。

さてベルシー地区はもともとブドウ畑なれば、保存すべき歴史的建築物もなし、大方は近年に建てられたるものばかりなれど、たとへば高さ制限を厳格に運用し、悪質な広告物を排除するなど、美しき街並を作らんとする意思は働きてあり。



一例をあげれば、ワイン倉庫の活用なり。この地域にはあちこちに、ワイン倉庫あり、それらの倉庫はただの機能的な建物には非ず、石を以て美しく作り、それらを集めて一つの街区となし、街区の中にはトロッコの線路を敷設す、一つの疑似年を形成しをるなり

ホテルの付近にかかる疑似都市あり、石畳の道路とそれにそって並びたるワイン倉庫を活用して、あらたなパサージュを形成す。パサージュ内には、さまざまな店やレストラン集まり、周辺より観光客を集めるに至る。

フランス流の街づくりの一端伺はるるなり。







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